平成31年度第34回海洋化学学術賞
平成31年度第34回海洋化学学術賞は,平成31年4月27日(土)京都大学百周年時計台記念館にて,佐野有司氏に授与されました.
佐野有司氏
所属・職:東京大学大気海洋研究所・教授
略歴:
1978年3月 東京大学理学部化学科卒業
1980年3月 東京大学大学院理学系研究科化学専門課程修士課程修了
1982年4月 東京大学大学院理学系研究科化学専門課程博士課程中退
1982年5月 東京大学理学部助手
1983年4月 理学博士(東京大学)
1990年8月 広島大学理学部助教授
1993年4月 広島大学理学部教授
2001年3月 東京大学海洋研究所教授(改組を経て現在に至る)
受賞題目:安定同位体を用いた海洋地球化学の研究
推薦理由:
佐野有司氏は,希ガス,炭素,窒素などの揮発性元素を用いた海洋化学・環境化学と二次イオン質量分析計を用いたウラン−鉛年代測定・微量元素地球化学を世界的に先導してきた.特にヘリウム同位体測定の手法開発に大きな貢献をなし,ヘリウム同位体の時空間分布の解析により海洋深層循環や地震・火山の研究に新しい展開をもたらした.併せて炭素・窒素同位体を用いて,全球レベルの物質循環を明らかにした.日本国内で初めて二次イオン質量分析法に基づくイオン顕微鏡(SHRIMP)を導入し,リン酸塩の年代測定法を開発し,世界最古の生命の痕跡や月の海の形成年代を議論した.さらに高分解能イオン顕微鏡(NanoSIMS)を導入し,炭酸塩の超高解像度微量元素分析から過去の海洋環境の精密復元を行った.加えて,Geochemical Journal誌編集長,アメリカ地球物理連合フェロー,国際地球化学会取締役を歴任するなど国内外の学会活動に貢献し,海洋地球化学の教科書を執筆するなど啓蒙活動にも顕著な貢献をなした.よって佐野氏は海洋化学学術賞にふさわしいと確信し,ここに推薦する.